平成27年(2015年)にスタートしたストレスチェック制度においては、ストレスチェックを受検しないことを理由とした不利益取扱いの禁止や、面接指導の申出を行ったこと又は行わないことを理由とした不利益取扱いの禁止等が明記されています。
また、明記されていなくても、ストレスチェックの結果をもって管理職のマネジメント能力不足を問うなどの措置も、避けなければなりません
目次
ストレスチェックにおける不利益取扱いの禁止
ストレスチェックにおいては、受検者保護の観点から、ストレスチェックを受けないことやストレスチェックの結果、面接指導が必要と判断された労働者から面接指導の申出がないことなどを理由とした不利益な取扱いは、全面的に禁止されています。
(1)受検しないことを理由とした不利益取扱いの禁止
事業者は、ストレスチェックを受けない労働者について、これを理由に不利益な取扱いをすることは禁止されています。
たとえば、就業規則でストレスチェックの受検を義務づけたり、受検しない労働者について懲戒処分を行ったりすることはできません。
また、ストレスチェックの結果を事業者に提供することについて、同意を拒んだ労働者について、これを理由とした不利益な取扱いをすることもNGです。
(2)面接指導の申出をしないことを理由とした不利益取扱いの禁止
ストレスチェックの結果、面接指導が必要とされた労働者については、実施者が面接指導を申出るよう勧奨します。この面接指導の申出を労働者が行わないことを理由に、不利益な取扱いをすることも禁止されています。
また、労働者が面接指導の申出を行った場合にも、そのことを理由とした不利益な取扱いも禁止されています。
(3)面接指導の結果を理由とした不利益取扱いの禁止
面接指導が必要とされた労働者が希望した場合には、事業者は医師による面接指導を実施しなければなりません。
医師による面接指導や指導結果に基づく必要な措置について、医師の意見を聴取せずに、就業上の措置について不利益な取扱いを行うことは禁止されています。
禁止されている「面接指導の結果を理由とした不利益取扱い」としては、以下のようなものがあります。
・解雇すること
・期間を定めて雇用される者について、契約更新をしないこと ・不当な動機・目的をもってなされたと判断されるような配置転換、または職位の変更を命じること ・退職勧奨を行うこと ・その他の労働契約法等の労働関係法令に違反する措置を講じること |
(4)面接指導を経ずに就業上の措置を講じることもNG
医師による面接指導が実施された後は、事業者は面接指導を実施した医師から、就業上の措置に関する意見を聴取します。そして、必要に応じて就業場所の変更、作業の転換など適切な措置を講じます。
事業者が面接指導の結果を踏まえて就業上の措置を講じる場合は、面接指導を実施した医師の意見を勘案し、労働者の実情も考慮した必要な措置を講じる必要があります。
講じる措置のなかには、労働者にとって不利益となりうるものの、必要性の高さなどから合理的な取扱いとなる場合もありますが、基本的には面接指導を経ずに以下のような就業上の措置を講じることは禁止されています。
・労働者本人の同意によって、事業者に提供された個人のストレスチェックをもとに、医師の面接指導を行わずに事業者が配置転換、職位の変更などの就業上の措置を講じること
・労働者個人のストレスチェックの結果をもとに、保健師、看護師、精神保健福祉士、産業カウンセラー、臨床心理士などによる相談対応を行った場合には、その結果をもとに医師の面接指導を行わずに、事業者が配置転換職位の変更などの就業上の措置を講じること |
(5)ストレスチェックの集団分析結果の取扱いも注意が必要
これまでご紹介したように、労働者個人のストレスチェックの受検の有無や結果を理由として不利益な取扱いをすることは、全面的に禁止されています。
同様にストレスチェックの集団分析についても、不利益な取扱いの問題は起こらないよう注意が必要です。
たとえば、集団分析の結果について、管理職のマネジメント能力不足と判定して、その管理職に対して不利益な取扱いを行ったり、ワークエンゲイジメントの低い部署について「愛社精神が低い」として、部署全体の人事評価を下げたりすることも、やはりストレスチェック制度の趣旨に反すると考えられます。
集団分析は職場改善のために行うものであり、管理職のマネジメント能力や愛社精神のスクリーニングを目的としたものではありません。したがって、受検結果を用いて罰するようなことは、行うべきではないでしょう。
まとめ
ストレスチェックの主な目的は、うつ病等のメンタルヘルス疾患のスクリーニングではなく、一次予防にありますが、それでもなお「ストレスチェックの結果によって、うつ病と診断されてしまうのではないか」といった不安をもつ労働者が見受けられます。
このような不安は労働者にストレスチェックの本来の目的や不利益扱いの禁止について適切に周知することで払拭できるかもしれません。また自身のストレスへの気づきを深めるためにも、1人でも多くの労働者にストレスチェックを受検してもらうことが大切です。
事業者はストレスチェックの結果をもとに、合理的な理由なく不利益な取扱いをすることがないという点について、労働者に周知すると同時に遵守することが強く求められています。
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【監修】 公認心理師 山本 久美(株式会社HRデ―タラボ) 大手技術者派遣グループの人事部門でマネジメントに携わるなかで、職場のメンタルヘルス体制の構築をはじめ復職支援やセクハラ相談窓口としての実務を永年経験。 |