
季節性うつ病とは、ある季節に起こるうつ病をいいます。
ある季節になると、意欲の低下や抑うつ気分、睡眠障害、過食による体重の増加、思考力低下を引き起こす病です。うつ病を考えるうえで、季節性による要因は見逃すことはできません。
監修:山本 久美(株式会社HRデータラボ 公認心理師)
目次
季節性うつ病とは?症状は?
季節性うつ病とは、主に秋から冬にかけて起こりやすいうつ病の一種です。日照時間が短くなり始める10月中旬頃から、春先の3月中旬頃にかけて、気分の落ち込みや意欲の低下、眠気の増加などが現れることがあります。
気候や生活リズムの変化が影響しやすく、本人の性格や努力だけの問題ではない点も理解しておくことが大切です。
(1)季節性うつ病の原因
10月中旬くらいから3月中旬くらいの時期は、日照時間が短くなっていくことから、季節性うつ病は、日照時間の短縮によって起こると考えられています。
人の脳の松果体という部位からは、「メラトニン」というホルモンが分泌されます。このメラトニンは、体内時計の調整に大きな役割を果たします。
そして、メラトニンは、夜に分泌量を増加させて睡眠を促し、日中にはその分泌量を減少させて覚醒を促す効果があるといわれています。
しかし日照時間が短縮すると、朝にメラトニン分泌を抑制できずスムーズに覚醒することができません。また、夜にメラトニン分泌を促進できないと、スムーズに睡眠に入ることができなくなります。
そのため、このメラトニンの分泌の調整が、季節性うつ病に大きな影響を与えていると言われます。
(2)季節性うつ病は、秋から冬に起こりやすい
季節性うつ病は、秋から冬にかけて起こりやすいとされています。
その理由の一つに、日の出が遅くなることでメラトニン分泌の抑制が遅れ、さらに日の入りが早まることで、メラトニンが分泌されやすい時間帯が長くなり、眠気やだるさが強まりやすくなります。加えて、日照時間が短くなることで太陽光を浴びる機会が減り、活動性や意欲に関わるセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質が脳内で作られにくくなります。こうした生理的な変化が重なることが、秋冬に気分の落ち込みが起こりやすくなる背景と考えられています。
参考: 厚生労働省e-ヘルスネット「セロトニン」
参考: 厚生労働省e-ヘルスネット「ノルアドレナリン / ノルエピネフリン」
(3)季節性うつ病は、春や夏に起こることもある
季節性うつ病は、前述したような理由から秋から冬に起こりやすいとされていますが、必ずしもその時期に限られるものではなく、春や夏に症状が出る場合もあります。
春から夏にかけては、太陽の光を浴びる時間が増え、体内リズムや睡眠リズムが整いやすく、心身の調子も安定しやすいと考えられています。しかし、生活環境や勤務形態、引きこもりがちな生活などにより日照時間が十分に確保できないと、このリズムが乱れてしまいます。
その結果、季節に関係なく気分の落ち込みや不調が現れることがあります。
(4)女性システムエンジニアの季節性うつ病の事例
厚生労働省の「こころの耳」には、女性システムエンジニアの季節性うつ病の事例が紹介されています。
主な症状
・11月になると頭痛や吐き気を自覚することが多くになり、会社に行こうとするとめまいがするようになった。
・休日になるとベッドから起き上がれなくなった。
・出勤できないことが続き、過食や頭痛などの症状も起きた。
治療経過
・3カ月会社を休職することとした。
・生活のリズムを改善するように生活指導を行った。
・治療開始後2カ月頃から、徐々に意欲が改善し、休職後3カ月で復職した。
・しかし、その年の秋にはまた会社を休みがちとなった。
参考: 厚生労働省こころの耳「[事例3-9]女性システムエンジニアの季節性うつ病の事例」
季節性うつ病は、周囲になかなか理解されにくく、「なまけ癖があるのではないか」「仕事が嫌になっただけではないのか」などと、誤解されるケースがあります。しかし、上記の事例があることも踏まえ、管理監督者や担当者は、治療の必要性について適切に理解し指導することが大切です。
季節性うつ病の対策と治療

これまでもご紹介したように、季節性うつ病は日照時間の短縮が原因で起こると考えられています。
したがって、季節性うつ病を改善するためには、太陽光をたくさん浴びるために適度な運動を行なう他、光を一定時間浴びる高照度光療法などの治療が効果的とされます。
(1)適度な運動が効果的
季節性うつ病は、日照時間の短縮が大きな要因と考えられています。
冬場は寒さの影響で外出の機会が減りやすく、運動不足に陥りがちです。適度な運動は、気分の安定に関わるセロトニンやノルアドレナリンの分泌を促しますが、運動量が少なくなると、これらの働きが弱まりやすいとされています。
そのため、朝に決まった時間で起床し、太陽光を浴びながら軽いウォーキングを行うことは、季節性うつ病の改善につながると考えられています。
外出が難しい場合でも、窓際で朝の光を浴びつつ、その場で体を動かすだけでも構いません。無理をせず、自分のペースで続けることが大切です。
(2)季節性うつ病と高照度光治療
高照度光治療は、朝5,000~1万ルクスの光を一定時間浴びる治療法で、季節性うつ病に効果があるとされています。
これまでもご紹介したように、メラトニンは体内時計の調整に大きな役割を果たすホルモンで、夜間に多く分泌され昼間には抑制されます。
メラトニンは、夜間に多く分泌されると血中濃度が高くなり眠くなりますが、網膜から強い光を浴びると、分泌量が低下し覚醒します。
また網膜から強い光を浴びると、セロトニンやノルアドレナリンなどの脳内神経伝達物質の分泌を促し、睡眠覚醒リズムを整えるようにアプローチすることも期待できます。
高照度光治療は、これらの作用を利用した治療法で、朝に高照度の光を浴びることで、メラトニンの分泌を低下させ、セロトニンやノルアドレナリンなどの脳内神経伝達物質の分泌を促し、身体を覚醒状態にすることを目的としています。
(3)季節性うつ病とトリプトファン補充療法
セロトニンの生産には、必須アミノ酸であるトリプトファンという物質が、非常に大きな役割を担っています。
必須アミノ酸であるトリプトファンは、脳内のセロトニンを増加させる物質として注目されています。そこで、うつ病患者における食事療法として、このトリプトファンを多く含む食品を摂取することが勧められるケースがあります。
必須アミノ酸であるトリプトファンは、普段私たちがよく口にする食品中のなかでも、特にタンパク質が多いほどたくさん含まれると言われています。
トリプトファンは、豆乳・牛乳・チーズ・ヨーグルトなどの乳製品、豆・ゴマ・ナッツ、落花生などの種類、肉、魚、鶏卵、バナナ、マンゴーなどのフルーツ類のほか、チョコレートにも豊富に含まれています。
専門医の指導のもと、トリプトファンを豊富に含んだ食品を盛り込んだ、バランスの良い食事療法を試してみるのもおすすめです。
まとめ
以上、季節性うつ病についてご紹介しました。
季節性うつ病は、秋から冬に起こりやすいと言われていますが、春から夏にかけて起こることもあります。
そしてその主な原因は、日照時間の短縮と言われています。
季節性うつ病については、本人が早期に症状に気づき適切な治療を受けることが大切です。担当者は、ストレスチェック制度の導入の際に、これらのメンタルヘルスに関する情報もあわせて提供するなどの配慮を行うことが大切です。
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監修:山本 久美(株式会社HRデータラボ 公認心理師)
大手技術者派遣グループの人事部門でマネジメントに携わる中、社内のメンタルヘルス体制の構築をはじめ復職支援やセクハラ相談窓口としての実務を永年経験。
現在は公認心理師として、ストレスチェックのコンサルタントを中心に、働く人を対象とした対面・Webやメールなどによるカウンセリングを行っている。産業保健領域が専門。

