自己承認力とは?高める方法は?

自己承認力とは、自分の弱さや未熟さも含めて現実的に受け止め、自分で自分を認める力のことです。仕事では、結果や周囲の評価が気になりやすく、思うようにいかないと自分を責めてしまう人も少なくありません。
しかし、自己承認力を高めることができれば、必要以上に落ち込まず気持ちを立て直すことが期待できます。

監修医師:細江 隼
日本医師会認定産業医
医学博士(東京大学大学院)
総合内科専門医
糖尿病専門医、指導医
健康経営アドバイザー
株式会社中央総合産業医事務所 代表取締役

自己承認力とは

自己承認力とは、他人の評価に依存せず、自分のありのままの状態や行動を自分自身で認める力です。
単に自分自身を褒めるだけでなく、失敗や弱さも「今の事実」としてフラットに受け入れる姿勢を指します。
自己承認力が高まると感情を整理しやすくなることがあり、他人と比較して消耗するケースが減りやすいとされています。また、うまくいかなかったときも「自分には価値がない」と極端に落ち込むのではなく「今回は結果が出なかっただけ」と切り分けて考えやすくなることが期待できます。

※なお、「自己承認力」という言葉は、心理学で正式に定義された専門用語ではなく、心理学の考え方をもとにしながら、ビジネスや自己啓発の分野で使われている表現です。

自己肯定感との違い

自己肯定感とは、成果や他人の評価に左右されず、「自分という存在そのものに価値がある」と受け入れられる感覚です。
一方、自己承認力は、今の自分を客観的に見つめ、評価せずにまず認める力です。

自己肯定感 自己承認力
定義 自分の存在そのものを「これでいい」と肯定する感覚・状態 今の自分を客観的に見つめ、評価せずに認める力(スキル)
役割 心の安定を支える土台 心の状態を整えるための実践的な習慣
根拠 根拠はない(何かができてもできなくてもOK) 事実を認める(「今、私はこう感じている」「これをやった」と確認する)

自分を甘やかすことではない

自己承認力は、自分を甘やかすこととは異なります。
甘やかしとは、失敗した時に「運が悪かっただけ」「あの人のせいだ」と自分に都合のいい解釈をして、現実から目をそらすことです。その場では気が楽になっても原因に向き合えないため、同じ失敗を繰り返しやすくなり、成長も止まりやすくなります。
一方、自己承認力は「今回は準備不足だった」「今の自分は悔しいと感じている」と、感情や状況をありのままに受け止める力です。自分を責めすぎず、事実を認めたうえで次に何を改善するかを考えられるため、長い目で見れば成長を支える土台になり得ます。

自己承認力が低い人に起こりやすいこと

自己承認力が低い人は、褒められても「たまたまです」と受け流してしまうなど、自分の努力や成果を素直に認めにくい傾向があります。
また、小さなミスがあると必要以上に自分を責め、「自分はダメだ」と自分自身まで否定しやすくなります。
さらに、他人と自分を比べて落ち込みやすく、仕事でも気づかないうちに心をすり減らしてしまうことがあります。

褒められても素直に受け取れない

自己承認力が低い人は、褒められてもその言葉を素直に受け取りにくい傾向があり、「お世辞ではないか」「何か意図があるのでは」と相手の言葉を疑いやすくなることがあります。
自己承認力が低い人は「自分は仕事ができない」という強固なセルフイメージを持っていることが多く、それと矛盾する「仕事が早い」という褒め言葉についても、自己イメージとの食い違い(認知的不協和)から心理的に受け取りにくく感じることがあります。

小さなミスで自分を否定しやすい

自己承認力が低い人は、小さなミスを必要以上に大きく受け止め、「今回の失敗」と「自分の価値」を切り分けて考えることができなくなることがあります。
本来であれば「今回は確認不足だった」「次は気をつけよう」と考えれば済むような場面でも、「完璧にできない自分には価値がない」「やはり自分は仕事ができない」と、自分自身の否定にまで結びつけてしまうのです
結果として、失敗そのもの以上に自分を傷つけ、立ち直りに時間がかかりやすくなります。

他人と比較してしまう

自己承認力が低いと、自分を支える「内側の支柱(自分軸)」が安定せず、他人の目線という物差しで自分の価値を測る傾向があります。自分の選択に自信が持てないため、小さな決断でも「これで大丈夫かな?」と他人の承認や許可を求めてしまいます。
また、「あの人より上か下か」「人並みかどうか」を気にし続けて、比べる相手の良い面や目立つ成果ばかりに目が向く一方で、自分については失敗や欠点ばかりを意識しやすい傾向があります。比較そのものが不利な勝負になりがちで、「自分はまだ足りない」「あの人にはかなわない」と感じやすく、必要以上に落ち込んだり焦ったりしてしまいます。

自己承認力が高い人の特徴

自己承認力が高い人は、自分の感情を客観的に見つめやすく、気持ちを整理しやすい傾向があるとされています。
また、「こうあるべき」「失敗してはいけない」といった考えに縛られ過ぎず、柔軟に物事を受け止めやすい傾向があります。さらに、他人の評価だけで自分の価値を決めることがないので、他人から受けた評価に一喜一憂することも少ないです。たとえ失敗しても必要以上に自分を責めず、気持ちを切り替えて立ち直りやすいのも大きな特徴です。

感情のコントロールが上手

自己承認力が高い人は、湧き上がってきた感情に対して必要以上に「良い・悪い」のジャッジ(審判)を下さないことが多いとされています。
雨が降っているのを見て「雨が降るなんて空がダメだ」とは言わないのと同じで、湧き上がる感情も「今、心に起きている自然な現象」としてそのまま認めます。
たとえば、怒りや不安を感じた時に「こんなことでイライラする自分はダメだ」「不安になるなんて弱い」と自分を責めることがなく、「今、自分は怒りを感じているな」とまずは事実を受け止めます。
「怒り=悪いことではない」とい受け止め、感情そのものを否定することまではしません。
怒りの感情を認めることと、衝動的な言動に移すことは別問題です。感情をそのまま認めつつ、行動はどうするかを別に考えることが、自己承認力の実践につながります。

「~べき」に縛られすぎない

自己承認力が高い人は、「~するべき」「こうでなければならない」といった考えに縛られすぎず、心に柔軟さがあります。
自己承認力が低いと、高すぎる理想を自分に課してしまい、「完璧であるべき」という理想の姿を「本来の自分」だと思い込み、それができない現実の自分を「偽物・ダメな奴」と否定してしまいます。
一方で、自己承認力が高い人は、「理想はあるけれど、今の自分はここまでしかできない」という現在の位置をそのまま認めます。「等身大の受容」があるため、過度なプレッシャーに振り回されません。
結果的に失敗や未達成があっても、必要以上に落ち込みません。

他人の評価に左右されにくい

自己承認力が高まると、自分の価値を測る基準を自分の内側に置きやすくなるため、周囲の評価に過度に振り回されにくくなることがあります。たとえば、批判を受けたときも「自分という人間そのものが否定された」と受け止めるのではなく、「相手からはそう見えたのだな」と一つの意見や改善のヒントとして整理します。また、すべての人に好かれるのは難しいという現実も受け入れているため、誰かに否定されたとしても過度に自分を責めません。
反対に良い評価を受けた時も、「自分への攻撃」や「プレッシャー」と捉えず、そのままギフトとして受け取ることができます。

立て直しのきっかけをつかみやすい

自己承認力が高い人は、失敗やショックな出来事があっても、気持ちを立て直すきっかけをつかみやすい傾向があるとされています。なぜなら、「ミスはしたが、自分の価値は変わらない」と、失敗と自分自身の価値を切り離して考えるからです。
失敗しても、「やり方に改善点があった」と出来事として振り返ることはあっても、「自分は無能だ」と人格そのものまで否定しません。
さらに、過去の小さな成功や困難を乗り越えてきた自分を日頃から承認しているため、「今はどん底だけど、また少しずつ上がっていけるかもしれない」「自分なら、立て直せるかもしれない」と比較的前向きに考えやすくなることが期待できます。

自己承認力を高める方法

自己承認力を高めようとしても、いきなり大きく変わろうとしないことが大切です。
まずは小さくできたことを認める習慣を持ち、ミスをした時も「失敗した事実」と「自分の価値」を切り分けて考えるよう意識してみます。
「私はこう感じた」と伝えるIメッセージを意識したり、その日にできたことを言葉にしたりすることも、自分を客観的に認める練習につながります。

スモールステップで自分を認める

自己承認力を高めるには、大きな成功を待つのではなく、日常の小さな「できたこと」を自分で認める習慣を持つことが大切です。自己承認力が低い人ほど、「これくらいは、できて当然」と基準を上げがちですが、まずは承認のハードルを下げることが出発点になります。

当たり前の基準を下げる
「朝起きた」「メールを1通返した」など、日常の行動もきちんと認めます。

結果ではなく過程を見る
完了したかどうかだけでなく、「取りかかった」「調べた」といった一歩も評価します。

否定しなかった自分も認める
失敗しても自分を責めすぎずに踏みとどまれたなら、それも大事な前進です。

感情も一緒に言葉にする
「連絡できてホッとした」「片づけてスッキリした」と添えると、自分の心の動きにも目を向けやすくなります。

声に出すか書き出す
頭の中だけで終わらせず、口に出したり、3行ほどメモをしたりすると、自分からの承認がよりはっきり残ります。

ミスと自分の価値を切り分ける

自己承認力を高めるうえで大切なのが、ミスと自分の価値を切り分けて考えることです。たとえば、「メールの宛先を間違えた」「計算をミスした」というのは、あくまで行動や結果のエラーであり、自分の存在そのものを否定する理由にはなりません。

行為と存在を分けて考える
「ミスをした事実」と「自分はダメな人間だ」という思い込みは別物です。

言葉を置き換える
「私は仕事ができない」ではなく、「今回の資料に誤字があった」と、行動ベースで捉え直します。

自分の味方になる
ミスを責める裁判官ではなく、「次はどう防ぐか」を一緒に考えるパートナーのように、自分に向き合うことが大切です。

I(アイ)メッセージを使う

自己承認力を高める方法のひとつが、I(アイ)メッセージを使うことです。
Iメッセージとは、「私は~と感じている」「私は~したい」と、自分を主語にして気持ちや状態を言葉にする伝え方です。
自己承認力が低いと、「普通はこうすべき」「相手はどう思うか」と外からの視点で自分を裁きやすくなりますが、主語を「私」に戻すことで、自分の内側にある本音を認めやすくなります。

感情をそのまま認める
「腹が立つ」ではなく、「私は○○について、こう思っている」と言い換えると、自分の感情を否定せず受け止めやすくなります。「腹が立つ(怒り)」という感情の渦中にいるときは、自分と怒りが一体化していますが、それを「私は~と思っている」と言語化することで、自分を一歩引いた場所から眺める「観察者の視点」が生まれます。

評価ではなく状態を見る
「私は仕事ができない」ではなく、「私は今、仕事が重なって焦っている」と表現すると、自己否定ではなく現状の整理につながります。

自分の感覚を大切にする
「私はこれが好き」「私はこれが苦手」と言葉にすることは、自分軸を育てる練習にもなります。

ストレスチェックをもっと活用しよう

自己承認力を高めるうえで、ストレスチェックを自己理解の一助として活用することは、選択肢のひとつとなります。
ストレスチェックは、単に疲れの有無を確認するものではなく、自分の状態を客観的なデータとして把握するきっかけになるからです。気分や思い込みだけで判断するのではなく、「今は負荷が高い状態なんだ」と事実として受け止めやすくなり、自分を必要以上に責めにくくなります。

自分の状態を客観視する
結果を見れば、今の負担や心身の状態を冷静に確認しやすくなります。

周囲の支援に気づく
上司や同僚のサポート状況を見直すことで、「一人で抱え込まなくていい」と考えるきっかけになることもあります。

小さな行動につなげる
自己承認力を高めるうえで、ストレスチェックを自己理解の一助として活用することは、選択肢のひとつとなります。睡眠不足や過労状態では、ネガティブな思考や自己否定に陥りやすくなるからです。

大切なのは、ストレスチェックの結果を自己否定の材料にしないことです。今の自分を知り、整えるための材料として使うことがポイントです。

 

ストレスチェッカーとは

「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しているのはもちろん、2025年5月からは無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施が義務化されることとなりました。
ストレスチェックを活用することで自分の状態を客観的に把握でき、早めのセルフケアにつなげやすくなります。導入方法など、お気軽にご相談ください。


★ ストレスチェック導入のご相談はこちら

 

監修:医学博士・日本医師会認定産業医/細江 隼

医学博士・日本医師会認定産業医/細江 隼氏

【監修医師】細江 隼
日本医師会認定産業医
医学博士(東京大学大学院)
総合内科専門医
糖尿病専門医、指導医
健康経営アドバイザー
株式会社中央総合産業医事務所 代表取締役

都内の基幹病院・大学病院内科で専門医・指導医として診療に従事してきた経験から予防医学の重要性を実感し、現在は多様な業種の企業で産業医として活動。衛生委員会参加や職場巡視、健診の事後措置、長時間労働面談、ストレスチェック、休職・復職面談など幅広い産業保健業務を担当しています。メンタルヘルス対策やフィジカル面の健康管理、健康経営の推進を通じ、働く人と組織双方の支援を行っています。


> 細江 隼 | 株式会社中央総合産業医事務所

    まとめ

    ストレスチェックは、従業員のストレス状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とした制度です。現在は従業員50人以上の事業場で義務化されていますが、今後は50人未満の企業にも対象が拡大される予定です。
    ストレスチェックを「自分の状態を客観的に把握するための一つのツール」として活用することは、自己を正確に知るという意味で、自己承認力を実践する文脈と重なります。結果を自己批判の材料にするのではなく、「今はこういう状態なのだ」と事実として受け止めることが、セルフケアや働き方の見直しへの第一歩になります 。
    ストレスチェッカーは、官公庁・上場企業・医療機関などで採用されている国内最大級のストレスチェックツールです。自動リマインド、面接指導者管理、進捗確認機能を標準搭載し、2025年5月からは無料プランでも「プレゼンティーイズム(生産性低下)」の測定に対応しております。
    導入方法や実施方法など、お気軽にお問合せください。

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