2022年から中小企業も義務化|パワハラの法律改正

2019年の通常国会において「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(以下、労総法)が改正されました。
これにより、職場におけるパワーハラスメント防止対策が事業主に義務づけられることになりました(中小事業は2022年4月1日から義務化)。

▶ 厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました︕」

パワハラを規制する法令が改正

パワーハラスメントに関する会社の責任について、これまで労働契約法5条および民法上の安全配慮義務に基づいて規制がなされており、直接事業主(会社など)にパワハラの防止措置義務を明文で課しているものはありませんでした。令和2年(2020年)6月1日から施行された法改正により、大企業については事業主のパワハラ防止措置が義務化され、義務を怠った場合には企業名が公表されることになりました(中小事業は、令和4年(2022年)4月1日から義務化)。

なお、中小企業か否かは、以下の区分表をご覧ください。

業種①資本金の額または出資の総額②常時使用する従業員の数
小売業5,000万円以下50人以下
サービス業
(サービス業、医療・福祉等)
5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他の業種
(製造業、建設業、運輸業等上記以外のすべて)
3億円以下300人以下

(1)パワハラ防止措置の義務化

事業主は、パワハラに関して労働者からの相談に応じて適切に対応するために必要な体制を整備しなければなりません。また、その他の雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられました(労総法30条の2第1項)。
具体的には、事業主の方針の明確化およびその周知・啓蒙、相談窓口の整備およびその周知、事後の迅速かつ適切な対応などの体制を整備することが求められます。

①事業主の方針の明確化およびその周知・啓発
・パワーハラスメントの内容およびパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確にし、管理監督者を含む労働者に周知・啓発することが求められます。
さらに、パワーハラスメントの行為者については厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等に規定して、管理監督者を含む労働者に周知・啓発することもあわせて行う必要があります。

②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
・相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する必要があります。
・相談窓口の担当者が、内容や状況に応じて適切に対応できるようにすること、また広く相談に対応することが求められます。

③職場におけるパワーハラスメントの事後の迅速かつ適切な対応
・事実関係を迅速かつ正確に確認しなければなりません。
・事後確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行う必要があります。また、パワーハラスメントの行為者に対する措置を適正に行わなければなりません。
・再発防止に向けた措置を講ずることが求められます(事実を確認できなかった場合も同様です)。

④上記①~③の措置とあわせて講ずべき措置
・相談者、行為者などのプライバシーを保護するために必要な措置を講じ周知します。
・相談したこと、事実関係の確認に協力したことなどを理由として、不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発しなければなりません。

(2)パワハラの相談をしたことの不利益取り扱い禁止

労働者が、パワハラの相談を行ったこと、事業主による相談対応に協力した際に事実を述べることによって、解雇その他の不利益な取り扱いをすることは禁止します(労総法30条の2第2項)。
これにより、相談者自身の不利益な扱いが禁止されることはもちろんですが、パワハラ相談を契機として第三者の従業員に事実調査のヒアリングを行った場合には、事実を話した第三者の従業員の不利益な取り扱いもあわせて禁止されます。これは、努力義務である中小事業主の場合も同様です。

(3)パワハラの義務を怠った場合には勧告と企業名公表

企業が、パワハラ防止措置義務を怠っていると認められる場合、厚生労働大臣は是正の勧告をすることができます。さらに企業がこれに従わなかった時には、企業名が公表されます(労総法33条)。

(4)研修、啓発活動が事業主の責務に(努力義務)

労総法の改正により、事業主には以下のような責務が課せられます(努力義務)。

①パワハラに対して従業員が関心と理解を深めるとともに、従業員が他の従業員に対する言動に必要な注意を払うよう研修等の実施に努めなければなりません(労総法30条の3第2項))。

②国が行うパワハラ問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければなりません(労総法30条の3第2項)。

③事業主自らもパワハラ問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければなりません(労総法30条の3第3項)。

(5)労働者のパワハラへの理解

今回の改正では、労働者にもパワハラ問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならないとされます(労総法30条の3第4項)。
また、事業主が講じるパワハラ防止措置に協力するよう、努めなければなりません(労総法30条の3第4項)。

まとめ

以上、パワーハラスメントに関する法改正についてご紹介しました。今回の改正により、より一層事業主の責務が強化されることとなり、令和4年(2020年)からは中小企業にも義務づけられます。
なお、どのような行為がパワハラに該当するのかについては、以下の記事で過去の裁判例を挙げながら解説しています。
あわせてご覧ください。

▶ パワハラの裁判例|パワハラ認定された例&されなかった例

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    現在は公認心理師として、ストレスチェックのコンサルタントを中心に、働く人を対象とした対面・Webやメールなどによるカウンセリングを行っている。産業保健領域が専門。

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