五月病を予防するための3つのコツ

入社時はイキイキとしていたのに、ゴールデンウィークあたりには無気力になっている新入社員を見たことはありませんか。

このような症状は一般的に「五月病」と呼ばれています。この記事では、どんな人が五月病になりやすいのかや、それを予防するためのコツについて解説します。

五月病とは

五月病とは、新入社員や新入生など環境が大きく変わった人間が、ゴールデンウィークを過ぎた時期に無気力になる症状のことです。
これは正式な病名ではなく、適応障害の一種であると考えられています。症状が悪化すると、うつ病に進行することもあります。

五月病になりやすい人

五月病になりやすい人は、以下のように四月から環境が大きく変わった人です。

・新入社員
・新入生
・転職者

新入生の中でも、大学生は特に五月病に注意が必要です。大学生は高校生までと比べて、親元を離れて一人暮らしを始める人が多いでしょう。そのように環境が大きく変わるほど、五月病のリスクは大きくなると考えられています。
また、勤務する会社は同じであっても、部署の異動がある人も注意しましょう。人間関係が大きく変われば、場所は変わらずともリスクとなり得ます。

五月病の症状

五月病の具体的な症状は、以下の通りです。

・無気力
・気分の落ち込み
・不眠
・食欲不振
・倦怠感

うつ病の初期症状ともよく似ています。また、五月病は放置するとうつ病に進行することもあります。
うつ病とは、気分は激しく落ち込んで、やる気がわかなくなる状態のことです。
誰でも気が滅入ってしまうことはありますが、通常は周囲から励まされたり時間が経過したり、あるいは楽しいことに目を向けたりすれば、滅入った気分は晴れるものです。
しかしうつ病になると、思考や感情にトラブルが生じて、気持ちの切り替えがスムーズにいかなくなることがあります。
一時的なうつ状態であれば日常生活に大きな支障はありませんが、五月病かな?と思ったら早めに適切な対処をすることが大切です。

五月病になりやすい性格

五月病は、真面目で責任感が強く、他人への思いやりがある人ほど罹りやすいと考えられています。
人一倍頑張り屋で、気配りができ、頼まれごとをすると断れない人は、ストレスを抱え込みやすく、無自覚のうちに心が疲弊してしまう傾向があります。
しかし、まじめで几帳面だからといって、必ずしも五月病になるわけではありません。そのような性格に加えて、職場や学校などの生活環境から、どのようなストレスを受けるかによって、かなり違うからです。
なお、転職によって管理職に就いた真面目な方も、注意しましょう。他人へ目を配るだけでなく、自分の健康にも気をつけてください。

五月病を予防するためのコツ3選

放置するとうつ病に進行する恐れのある五月病を予防するためのコツを3つ紹介します。

・同期とゴールデンウィークを使って交流する
・質の良い睡眠を確保する
・バランスの良い食事を心がける

同期とゴールデンウィークを使って交流する

先ほどお話ししたように、真面目な人ほど五月病にかかりやすいことが知られています。適度な息抜きが五月病の予防には重要です。
真面目な人は、休暇期間であるゴールデンウィークも自己研鑽に充てがちです。しかし、それによって五月病を招いてしまえば、結果的に組織に迷惑をかけることになります。思い切ってリフレッシュに充てるのも選択肢の一つとして考えてみてください。
そして、リフレッシュの相手は会社や学校の同期がおすすめです。同期であれば、新しい環境での苦労等も共有できる可能性があるからです。

質の良い睡眠を確保する

五月病の予防法として、質の良い睡眠を確保することが挙げられます。質の高い睡眠を取るコツは、以下の通りです。

・就寝前は頭と目を休める
・運動をする
・バランスの良い食事をとる

就寝前は頭と目を休める

就寝前にスマートフォンを操作したり、パソコンで仕事をしたりすると、睡眠の質が悪くなることが知られています。
寝る1時間前はできる限り目と頭を休めるためにも、スマートフォンやパソコンは避けて、読書をしたり家族と話をしたりといった、気持ちが落ち着くような時間を持つ習慣を心がけましょう。

運動をする

運動をすると、睡眠のリズムをコントロールするホルモンであるメラトニンの分泌量が増えます。メラトニンの増加により、睡眠の質の向上が期待できるでしょう。
なお、うつ病の改善にはウォーキングがよいという研究結果もあります。ウォーキングのほかにも、水泳やサイクリングなどの有酸素運動は、うつ病の改善にも効果があります。

バランスの良い食事をとる

睡眠のリズムをコントロールするホルモンであるメラトニンは、体内時計の調整に大きな役割を果たしますが、このメラトニンは必須アミノ酸の一つであるトリプトファンから作られます。
そのトリプトファンは、食事に含まれるタンパク質から合成されます。バランスの良い食事をとることでメラトニンを上手く作れるようになるので、睡眠の質の向上が期待できます。

バランスの良い食事を心がけることで睡眠の質が高まれば、五月病を予防することが期待できます。それだけでなく、バランスの良い食事は精神を安定させることでも五月病のリスクを抑えられるかもしれません。
神経伝達物質であるセロトニンは、不安を抑える効果を持ちます。そして、五月病とよく似た症状のうつ病や適応障害の治療では、セロトニンの量を増やす薬が治療に用いられます。食事の内容を見直すことで、セロトニンの量を増やせるでしょう。

このセロトニンは、必須アミノ酸であるトリプトファンから作られます。そして、トリプトファンはチーズやヨーグルトなどの乳製品、大豆や穀物などに多く含まれます。これらを積極的に食べることで、五月病を予防できるかもしれません。

五月病の予防のためにゴールデンウィークはリフレッシュを

真面目な新入社員は、ゴールデンウィークも自己研鑽に充てて、同期との差を広げようと思うかもしれません。しかし、このような真面目な人ほど五月病にかかりやすいことが知られています。
五月病は放置すれば、うつ病へと進行することもあります。そうならないためにも、ゴールデンウィークは思い切ってリフレッシュしましょう。
そして日頃から、睡眠の質を高めること、そしてバランスの良い食事をとることも意識して、五月病を防ぐようにしたいものです。

監修:精神科医・日本医師会認定産業医/近澤 徹

【監修医師】
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役
近澤 徹

オンライン診療システム「Mente Clinic」を自社で開発し、うつ病・メンタル不調の回復に貢献。法人向けのサービスでは産業医として健康経営に携わる。医師・経営者として、主に「Z世代」のメンタルケア・人的資本セミナーや企業講演の依頼も多数実施。

> 近澤 徹| Medi Face 医師起業家