上司がストレス!対処法は?

上司に対するストレスは、個人の我慢や気合で片づけるべき問題ではなく、組織として向き合うべきマネジメント課題です。理不尽な指示、感情的な対応、責任の偏りといった状態が放置されると、離職や生産性低下、ハラスメントリスクへと直結しますから、職場構造やコミュニケーション設計の問題として捉える必要があります。
この記事では、上司ストレスが生まれる背景を整理したうえで、ストレスチェックを活用した可視化の方法と、組織として取るべき具体的な対策について解説します。

監修医師:近澤 徹
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役

なぜ上司はここまでストレスになるのか

上司は業務の指示、評価、権限を握る立場にあり、その言動が日常的に仕事や将来に直結するため、部下は常に影響を受け続けます。指示の曖昧さや態度の変化、理不尽な叱責は、先の見通しを奪い、強い不安を生みます。
さらに、上下関係のある環境では「逆らえない」「相談しづらい」という構造的な要因が重なり、ストレスが蓄積しやすくなります。

指示が曖昧・一貫性がない(言動が毎回違う)

上司へのストレスのうち多いのが、指示が曖昧で一貫性がなく言動が毎回違うケースです。
たとえば、ある日は「スピード重視で進めて」と言われたのに、翌日には「なぜこんなに雑なんだ」と叱責されるケースや、「自分で考えて動いて」と任せられたはずが、結果を出すと「勝手に判断するな」と評価を下げられるケースなどです。
こうした矛盾した指示が続くと、何を基準に動けばいいのか分からなくなり、常に顔色をうかがう状態になります。このタイプの上司のもとでは、部下はミスを恐れて萎縮し、判断力や主体性が奪われやすくなります。また、注意すれば修正できる問題ではないため、「自分の理解力が低いのでは」と自己否定に陥ることも少なくありません。

感情的・高圧的(機嫌で態度が変わる)

上司ストレスの中でも、感情的・高圧的で機嫌によって態度が変わるタイプは、部下に大きな心理的負担を与えます。
たとえば、普段は普通に会話できるのに、忙しくなると突然怒鳴る、些細なミスを人格否定のような言葉で責めるといったケースです。中には、特定の部下だけを執拗に叱責したり、皆の前で見下す発言を繰り返したりするなど、明らかにモラルハラスメントに該当する行為もあります。
このような上司のもとでは、部下は常に緊張状態に置かれ、「次は自分が標的になるのでは」と不安を抱えながら働くことになります。その結果、集中力の低下や不眠、出社前の動悸など、心身の不調が表れやすくなります。感情的・高圧的な言動は指導ではなく、職場環境を悪化させる行為です。

過干渉・マイクロマネジメント

上司ストレスの中で多くの人を疲弊させるのが、過干渉やマイクロマネジメントです。
本来は任せるべき業務にまで細かく口を出し、進め方や判断を逐一チェックされると、部下は常に監視されている感覚に陥ります。たとえば「2週間後までにやっておいて」と指示された仕事に取りかかった後、わずか30分後に「今どこまで進んだ?」と進捗を尋ねられるようなケースです。
このような対応が繰り返されると、部下は自分のペースで考える余地を失い、確認を待つ受け身の姿勢になりやすくなります。結果として、主体性や判断力が削がれ、仕事の質やスピードも低下します。
上司側は「管理しているつもり」でも、部下にとっては信頼されていないサインとして受け取られ、強いストレスになります。過干渉やマイクロマネジメントは、個人の成長を妨げ、職場全体の生産性を下げる要因であり、耐え続けることで解決する問題ではありません。

無視・放置(聞いても反応がない)

上司ストレスの中でも見えにくく、深刻化しやすいのが、無視や放置といった対応です。
業務上の確認や相談をしても返事がない、メールやチャットを送っても既読のまま反応がなく、必要な判断がもらえないまま仕事が止まってしまうといったケースがあります。
なかには、締め切りが迫っている企画について質問しても何日も返答がなく、後になって「なぜ勝手に進めた」「なぜ進んでいない」と責められるといったケースもあります。
このような無視や放置が単なる多忙による対応遅れではなく、特定の部下に対して意図的に行われている場合、ハラスメントに該当する可能性があります。部下は常に不安を抱え、判断基準を失い、自信を削がれていきます。無視・放置は声を荒げない分、周囲から気づかれにくいものの、心理的なダメージは大きく、我慢や工夫だけで解決すべき問題ではありません。

責任を押し付ける

上司ストレスの中でも、特に心を消耗させるのが「責任を押し付ける」タイプの上司です。
たとえば、上司の判断で進めた業務が失敗した際、会議では部下に説明を任せ、自分は沈黙し、問題が表面化した途端に「報告が不十分だった」「君の詰めが甘い」と責任を転嫁するケースがあります。
なかには、事前に指示した事実をなかったことにし、部下だけを矢面に立たせる卑劣な対応も見られます。
こうした上司のもとでは、周囲も事態を把握していても口を出せません。「告げ口したと思われたら逆恨みされそう」「言っても信頼されないだろう」という空気が広がり、問題が放置されがちです。その結果、部下は孤立感を強め、「誰も守ってくれない」という無力感を抱えるようになります。

評価基準が不透明

どれだけ成果を出しても理由の説明がなく評価が下がる一方で、何を改善すればよいのかも示されないと、部下は強い不安を感じます。
たとえば、普段は特に指摘がなかったのに、評価面談で突然「期待していたほどではなかった」と言われ、具体的な根拠が示されないケースがあります。別のメンバーは同じ業務内容でも高評価を受けており、基準が分からないまま比較されることも少なくありません。
このような環境では、努力の方向性が定まらず、「頑張っても意味がない」という無力感が生まれます。また、評価が上司の主観や機嫌に左右されていると感じると、仕事への意欲や信頼感は大きく低下します。

上司ストレスを放置するリスク

上司ストレスを放置すると、部下の心身にはさまざまな不調が現れやすくなります。最初は「少し疲れているだけ」と感じていても、不安感や気分の落ち込みが続き、眠れなくなるなど生活リズムが乱れていくことがあります。十分に休めない状態が続くと集中力が低下し、これまで起きなかったミスが増え、自分を責める悪循環に陥りがちです。さらに、「頑張っても評価されない」「どうせ何をしても変わらない」という感覚が強まり、仕事への意欲そのものが失われていきます。

不安・抑うつ

上司ストレスを放置したときに、最初に表れやすいのが不安感や抑うつ状態です。
たとえば、朝起きた瞬間から「今日は何を言われるだろう」と胸がざわつき、出社前に理由もなく気分が沈んだり、仕事中も上司の表情や声のトーンが気になり本来集中すべき業務に身が入らないという人もいます。最初は一時的な気分の落ち込みでも、理不尽な叱責や無視、評価の不透明さが続くと、「自分が悪いのかもしれない」「何をしても否定される」という考えが頭から離れなくなります。その結果、必要以上に自分を責めたり、失敗を極端に恐れたりして、気づかないうちに心がすり減っていきます。

眠れない

上司ストレスを放置すると、「眠れない」という形で体に影響が出ることがあります。布団に入って目を閉じても、昼間に上司から言われた一言が頭の中で何度も浮かび、考え事が止まらないまま時間だけが過ぎていきます。ようやく眠れたと思っても、夜中や明け方に目が覚め、翌日の報告や対応を想像してしまい、そのまま眠れなくなるケースも少なくありません。
睡眠不足が続くと疲労が蓄積し、集中力や判断力が落ち、日中のミスが増えやすくなります。すると「また怒られるのでは」という不安が強まり、さらに眠れなくなるという悪循環に陥ります。

集中力低下

上司ストレスを放置すると、仕事を始めても頭がうまく切り替わらず、画面を見つめたまま手が止まってしまったり、上司の機嫌や次に言われそうな一言が気になり、本来考えるべき内容に意識を向けられなくなってしまったりといった、集中力の低下が見られることがあります。
たとえば、資料を作成していても「ここを突っ込まれたらどうしよう」と不安が先に立ち、何度も同じ箇所を確認して作業が進まないケースです。会議中も話の内容が頭に入らず、後から「何が決まったのか分からない」と感じることもあります。集中力が低下すると作業効率が落ち、時間がかかるわりに成果が出にくくなります。その結果、自分を責めたり、さらに緊張が強まったりして、集中できない状態が固定化していきます。

ミスの増加

上司へのストレスに悩んでいる状態が長くなると、以前なら問題なくこなせていた作業で、入力漏れや確認不足が起きるようになり、「どうしてこんなミスをしたのだろう」と戸惑う場面が増えていきます。
たとえば上司に強く叱責された直後、頭が真っ白になったまま作業を続け、簡単な数字の打ち間違いに気づけなかったというケースです。ミスが起きるたびに注意されることで緊張が強まり、「次は失敗できない」というプレッシャーがさらに集中力を奪います。その結果、慎重になりすぎて作業が遅れたり、逆に焦って確認を飛ばしてしまったりと、悪循環に陥ります。ミスが増えると評価が下がるのではという不安も強まり、仕事そのものが怖くなってしまいます。

仕事への意欲低下

上司へのストレスは、やがて仕事への意欲そのものが少しずつ削っていきます。最初は「評価されないのがつらい」「理不尽だ」と感じていただけでも、同じ状況が続くうちに、頑張る意味を見失っていきます。
以前は前向きに取り組んでいた業務でも、上司に成果を横取りされたり、責任だけを押し付けられたりする経験が重なると、「どうせ何をしても変わらない」と感じるようになります。次第に新しい提案を控え、最低限の作業だけをこなす状態になり、仕事への関心が薄れていきます。

上司ストレスを一人で抱えないための対処法

上司ストレスへの対応を個人の「我慢」や「忍耐」に委ねるだけでは、組織としてのリスク管理にはなりません。重要なのは、従業員が一人で抱え込まない仕組みを整えることです。
また、上司の感情や言動に過度に左右されないための関係性設計や、過剰な期待を前提としないマネジメントの見直しも欠かせません。加えて、従業員が自分でコントロールできる業務範囲に集中できる環境を整えることで、不要な消耗を防ぐことができます。それでも負荷が高い場合には、配置転換や支援につなぐ判断も含め、組織として「逃げ道」を用意しておくことも大切です。

ストレスチェックで「上司ストレス」を可視化する

上司ストレスを一人で抱え込まないための第一歩は、「感じているつらさ」を可視化することです。上司の言動に振り回されながらも、「自分が気にしすぎなのでは」と思い込んでしまう人は少なくありません。ストレスチェックを受けることで、仕事の負荷や上司からのサポート不足、心身の反応が数値として示され、「やはり負担がかかっている」という事実を客観的に確認できます。
たとえば、業務量はそれほど多くないのに不安や疲労感の数値が高く出た場合、上司との関係が大きなストレス源になっている可能性があります。数値で見えると、従業員が自分を責める気持ちが和らぎ、相談や対処を考えやすくなります。ストレスチェックは、我慢を続けるための道具ではなく、上司ストレスを一人で抱えないための材料です。現状を整理し、次の一手を考えるための土台として活用することが大切です。

ストレスチェッカーとは

「ストレスチェッカー」は、官公庁・上場企業・大学・医療機関などで利用されている国内最大級のストレスチェックツールです。
未受検者への自動リマインドや進捗確認、医師面接希望者の管理など、現場で必要な機能を標準搭載しているのはもちろん、2025年5月からは無料プランやWEB代行プランでも、体調不良や心理的負担による生産性低下「プレゼンティーイズム」の測定が可能です。
ストレスチェックは、これまで努力義務とされていた労働者数50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施が義務化されることとなりました。
ストレスチェックは、自分の心身の状態を客観的に把握するための制度です。数値として現れる結果は、「ストレスフルな状態」に気づくヒントになり、必要に応じて休息や相談を取り入れることで、重い不調や長期休職を防ぐことができます。


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距離をとる(感情的に巻き込まれない)

上司ストレスへの対応を個人の忍耐や精神力に委ねるだけでは、組織としての健全性は保てません。現場で有効な対処法の一つが、感情的に巻き込まれない「距離の取り方」を意識的に設計することです。感情の起伏が激しい上司や、機嫌によって態度が変わる上司に対して、部下が真正面から受け止め続ければ、消耗が蓄積し、生産性や定着率にも影響します。
実際、叱責のたびに強く落ち込んでいた従業員が、「これは上司個人の感情の問題」と切り分け、報告を事実ベースに限定したことで、心理的負担が大きく軽減された例があります。さらに、対面でのやり取りを減らし、メールやチャットを活用することで、感情的な摩擦を避けられるようになったケースも見られます。距離を取ることは関係性を冷やす行為ではなく、組織として消耗を防ぐための重要なマネジメント設計の一つです。

期待値を調整する

上司ストレスを個人の我慢に任せず、組織として抑制していくうえで重要なのが、「上司に対する期待値」を現実的な水準に調整する視点です。部下が「きちんと話を聞いてくれるはず」「公平に評価してくれるはず」と過度な期待を抱いているほど、現実との乖離が大きくなり、心理的負荷や不満が増幅しやすくなります。
実際、相談しても十分に取り合ってもらえず疲弊していた従業員が、「この上司には細かなフォローまでは求めない」と割り切り、判断が必要な点だけを端的に伝えるようにしたことで、やり取りに振り回されにくくなった例もあります。期待値を下げることは諦めではなく、不要な消耗を防ぐための現実的な対応です。上司の人格を変えようとするのではなく、関わり方を調整することで、職場全体のストレスリスクを下げられる可能性は十分にあります。

自分でコントロールできる範囲に集中する

上司ストレスを個人の忍耐に委ねず、組織として健全に管理していくためには、「従業員が自分でコントロールできる範囲」に意識を戻せる環境づくりが重要です。上司の性格や機嫌、評価の軸は本人には変えられないにもかかわらず、そこに意識が向き続けると、心理的消耗が加速しやすくなります。
たとえば、上司の反応を過剰に気にして資料を何度も修正していた従業員が、「期限を守る」「事実を正確にまとめる」といった自分で決められる基準に集中するようになったことで、過度な不安や迷いが減ったケースがあります。評価や感情の部分は切り離し、準備や記録、報告のタイミングなど“自分で調整可能な行動”に意識を向けたことで、業務の安定性が高まりました。
人を変えることではなく、行動を設計できる状態をつくることが、上司ストレスを慢性化させないための実務的な対策といえます。

辛ければ、逃げてもいい

上司ストレスが限界に達しているにもかかわらず、「まだ耐えるべきだ」と踏みとどまり続ける状況は、組織として決して健全とは言えません。感情的な叱責や理不尽な扱いが常態化し、出社前に体調を崩したり、休日も仕事が頭から離れなかったりといった状態は、すでにメンタルヘルス上のリスクが顕在化しているサインです。実際、改善を期待して我慢を重ねた結果、ある日突然動けなくなり長期休職に至ったケースも少なくありません。一方で、配置転換や環境変更を早期に行ったことで、短期間で睡眠や意欲が回復した事例もあります。
「逃げる」ことは放棄ではなく、人的資本を守るための合理的なリスクマネジメントです。変わらない上司や職場に心身を消耗させ続ける前に、組織として“離れる選択肢”を許容・設計しておくことが、結果的に企業価値を守ることにつながります。

監修:精神科医・日本医師会認定産業医/近澤 徹

精神科医 近澤徹氏

【監修医師】
精神科医・日本医師会認定産業医
株式会社Medi Face代表取締役・近澤 徹

オンライン診療システム「Mente Clinic」を自社で開発し、うつ病・メンタル不調の回復に貢献。法人向けのサービスでは産業医として健康経営に携わる。医師・経営者として、主に「Z世代」のメンタルケア・人的資本セミナーや企業講演の依頼も多数実施。


> 近澤 徹 | Medi Face 医師起業家(Twitter)

    まとめ

    ストレスチェックは、従業員のストレス状態を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とした制度です。現在は従業員50人以上の事業場で義務化されていますが、今後は50人未満の企業にも対象が拡大される予定です。
    上司ストレスが辛いと感じるなら、無理に耐え続ける必要はありません。我慢を重ねるほど心身への負担は蓄積し、回復に時間がかかります。ストレスチェックを定期的に活用すれば、上司による負荷や自分の状態を客観的に把握できます。数値で変化を見ることで、「限界が近い」「調整が必要」といったサインに早く気づけます。逃げる判断も含め、自分を守る選択を冷静に考えるための材料として、ストレスチェックを活用することが大切です。
    ストレスチェッカーは、官公庁・上場企業・医療機関などで採用されている国内最大級のストレスチェックツールです。自動リマインド、面接指導者管理、進捗確認機能を標準搭載し、2025年5月からは無料プランでも「プレゼンティーイズム(生産性低下)」の測定に対応しております。
    導入方法や実施方法など、お気軽にお問合せください。

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