安全管理者とは、安全衛生業務のうち安全に関する技術的事項を管理する者です。
林業、鉱業、建設業などの業種で常時使用する労働者が50人以上の事業場では、安全管理者を選任しなければなりません。
また、一定の業種および規模の事業場では、安全管理者の1人を専任とすべきとされています。
目次
安全管理者とは
安全管理者とは、安全衛生業務のうち事業場の「安全」に関して管理をする人で、作業場や設備に危険がある場合には応急措置や防止のための措置を行なったり、作業の安全についての教育や訓練を行なったりします。
安全管理者は、以下の①~③のうちのいずれかに該当する有資格者から選任しなければならないとされています。
①大学または高専の理科系課程を卒業後2年以上(高校などの理科系課程を卒業した場合は、卒業後4年以上)、産業安全に関する実務を経験した者で、厚生労働大臣の定める研修を修了した者
②労働安全コンサルタント ③その他厚生労働大臣が指定する者 |
(1)安全管理者の業務とは
安全管理者の業務は、事業場の安全に関する技術的な事項を管理することで、統括安全衛生管理者が選任されている事業場では、その指揮に従って、以下の業務のうち安全についての技術的事項を管理します。
①建設物、設備、作業場所または作業方法に危険がある場合における応急措置または適当な防止の措置
②安全装置、保護具その他危険防止のための設備・器具の定期的点検および整備 ③作業の安全についての教育・訓練 ④発生した労働災害の原因調査と再発防止対策の検討 ⑤消防訓練、避難訓練 ⑥作業主任者その他安全に関する補助者の監督 ⑦安全に関する資料の作成、情報収集、重要事項の記録 ⑧作業場の巡視と危険防止に必要な措置 |
(2)安全管理者と衛生管理者の違いは
安全管理者が、事業場の「安全」に関する事項を管理する者であるのに対して、衛生管理者は事業場の「衛生」に関する事項を管理する者です。
衛生管理者となるためには、衛生工学衛生管理者、第一種衛生管理者、第二種衛生管理者、医師・歯科医師、労働衛生コンサルタント、その他厚生労働大臣が定める者でなければなりません。
衛生管理者は、労働者の人数に応じて選任すべき人数が決まっています。
50人~200人の事業場では、衛生管理者は1人以上必要となり、201人~500人の事業場では、衛生管理者は2人以上必要となります。
事業場で常時使用する労働者の数 | 選任する衛生管理者 |
50人~200人 | 1人以上 |
210人~500人 | 2人以上 |
501人~1000人 | 3人以上 |
1001人~2000人 | 4人以上 |
2001人~3000人 | 5人以上 |
3001人以上 | 6人以上 |
(3)安全管理者と産業医の違いは
産業医とは、事業者と契約を結んで健康診断やストレスチェックを実施したり、労働者の健康に関する指導や助言をしたりする医師です。
産業医は、常時使用する労働者の数が50人以上のすべての事業場で選任することが義務づけられています。
また、常時使用する労働者の数が1000人以上の事業場や一定の有害業務に常時500人以上の労働者を従事させる場合には、専属産業医を専任することが義務づけられています。
専属産業医とは、開業医などの嘱託ではなく事業場に常駐する産業医のことです。
(4)安全管理者を選任すべき業種
安全管理者を専任すべき事業場は、以下の業種のうち常時使用する労働者の数が50人以上の事業場です。
安全衛生管理者を専任すべき業種 | 常時使用する労働者数 |
林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業、製造業(物の加工業含む)、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・什器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・什器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業 | 50人以上 |
(5)専任の安全管理者を選任すべき業種
以下の業種と規模の事業場については、安全管理者の1人以上を専任の安全管理者とすべきであるとされています。
安全衛生管理者の1人以上を専任の安全管理者とすべき業種 | 常時使用する労働者数 |
建設業、有機化学工業製品製造業、石油製品製造業 | 300人以上 |
無機化学工業製品製造業、化学肥料製造業、道路貨物運送業、港湾運送業 | 500人以上 |
紙・パルプ製造業、鉄鋼業、造船業 | 1000人以上 |
上記以外の業種(ただし過去3年間の労働災害による休業1日以上の死傷者数の合計が100人を超える事業場に限る) | 2000人以上 |
(6)50人以上の事業場で必要なストレスチェック
安全管理者は、一定の業種のうち常時使用する労働者数が50人以上の事業場で選任すべきとされていますが、同様に常時使用する労働者数が50人以上の事業場で実施が義務づけられているものとしてストレスチェック制度があります。
ストレスチェックとは、メンタルヘルス対策の一次予防として、定期的に社員のストレスの状況について検査を行なう制度です。
平成27年(2015年)12月1日に施行され、常時50人以上の労働者を使用する事業場において義務づけられています。
企業の安全配慮義務違反があり労働契約法の違反であると認定されれば、社員からメンタルヘルス不調を理由として損害賠償責任を追及されるリスクがありますので、ストレスチェックの活用をはじめとした「事象が生じる前の取り組み」「予防するための取り組み」の実施は非常に重要です。
ストレスチェックの集団分析(部署ごとのストレスチェック結果の分析)の活用は、職場の環境改善に活用することができます。
まずは、各部署の所属長が集団分析結果から、課題や強みを把握して、実現可能な対策を検討します。
集団分析の結果は、悪い点にばかり目が向きがちですが、よい点にも目を向けて、低ストレス職場での取り組みなどを他部門で共有して、会社全体の活性化に活用します。
まとめ
事業者は、労働者が安全で健康に働くことができる快適な職場環境を形成するために必要な措置を講じることが求められます。
労働者が1名でもいる事業場の事業者には、安全配慮義務があり、一定の業種・規模の事業場では安全管理者や衛生管理者の選任が求められ、機械等の点検や整備、安全装置の点検や設置、健康診断やストレスチェックの実施などさまざまな措置をとらなければなりません。
最近は、過重労働やハラスメントによる脳疾患、心臓疾患、精神疾患などの発症による安全配慮義務違反が増えていますので、労働者の心身の条件を考慮して適切な措置をとることが大切です。
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